第4章 小・中学校学習指導要領(2017年3月告示)と著作物利用実践指導

 第4章では、著作物利用実践及びその指導並びに研修の内容を小・中学校学習指導要領(2017年3月告示)をもとに考えます。

著作物利用実践及びその指導並びに研修の内容を検討するための用語及び語句
 本検討においては、次の用語及び語句に着目します。

〇著作権法上の用語又は趣旨が学習指導要領に記載されている用語又は語句

(1)著作権法上の用語
   著作権 著作者※2 著作物※2 引用※3 出所の明示※4 許諾※5
  (※2)「著作者」及び「著作物」は、「著作者・著作物等」として処理した。
  (※3)著作権法第32条第1項
  (※4)著作権法第48条
  (※5)著作権法第63条

(2)著作権法上の用語の趣旨が学習指導要領及び同解説に記載されている「用語又は語句」
   「出所の明示」
     → 「出典」
   「著作者・著作物等」
     →「著作権者」(中学校学習指導要領(2017年3月告示)解説【音楽編】p.142)
     →「著作権をもつ者」、「創造された作品」、「肖像権」(中学校学習指導要領(2017年3月告示)解説【美術編】p.135-136)
     →「他者の作成した情報」、「情報の作成者の権利」(中学校学習指導要領(2017年3月告示)解説【総合的な学習の時間編】p.53)
     →「編著者名」(高等学校学習指導要領(2018年3月告示)解説【国語編】p.81)
     →「作成者」(高等学校学習指導要領(2018年3月告示)解説【地理歴史編】p.71,118)
     →「創作物」、「著作者人格権」(高等学校学習指導要領(2018年3月告示)解説【芸術編 音楽編 美術編】p.430)
     →「他者の作成した情報」、「情報の作成者の権利」(高等学校学習指導要領(2018年3月告示)解説【総合的な探究の時間編】p.54)

〇著作権法にはないが学習指導要領に記載されている広義の著作権分野の用語又は語句
   「肖像権」「肖像」(中学校学習指導要領(2017年3月告示)解説【美術編】p.135-136、高等学校学習指導要領(2018年3月告示)解説【芸術編 音楽編 美術編】p.430)

小学校学習指導要領(2008年3月告示)と小学校学習指導要領(2017年3月告示)の「用語」及び「語句」の変化等
 次に、小学校学習指導要領(2008年3月告示)と未曽有の大改訂となった小学校学習指導要領(2017年3月告示)について、「用語」及び「語句」の変化等を比較します。ここでは、そのいくつかをご紹介します。
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小学校学習指導要領(2008(平成20)年3月28日文部科学省告示第27号)
第1節 国語
第2 各学年の目標及び内容
〔第3学年及び第4学年〕
C 読むこと
(1) 読むことの能力を育てるため,次の事項について指導する。
エ 目的や必要に応じて,文章の要点や細かい点に注意しながら読み,文章などを引用したり要約したりすること。
(2) (1)に示す事項については,例えば,次のような言語活動を通して指導するものとする。
イ 記録や報告の文章,図鑑や事典などを読んで利用すること。
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小学校学習指導要領(2017(平成29)年3月31日文部科学省告示第63号)
第1節 国語
第2 各学年の目標及び内容
〔第3学年及び第4学年〕
2 内 容
〔知識及び技能〕
⑵ 話や文章に含まれている情報の扱い方に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 考えとそれを支える理由や事例,全体と中心など情報と情報との関係について理解すること。
イ 比較や分類の仕方,必要な語句などの書き留め方,引用の仕方や出典の示し方,辞書や事典の使い方を理解し使うこと。 (p.32)
〔思考力,判断力,表現力等〕
C 読むこと
⑵ ⑴に示す事項については,例えば,次のような言語活動を通して指導するものとする。
ア 記録や報告などの文章を読み,文章の一部を引用して分かったことや考えたことを説明したり,意見を述べたりする活動
イ 詩や物語などを読み,内容を説明したり,考えたことなどを伝え合ったりする活動。
ウ 学校図書館などを利用し,事典や図鑑などから情報を得て,分かったことなどをまとめて説明する活動。(p.34)
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【解説】
〔知識及び技能〕
⑵ 話や文章に含まれている情報の扱い方に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 考えとそれを支える理由や事例,全体と中心など情報と情報との関係について理解すること。
イ 比較や分類の仕方,必要な語句などの書き留め方,引用の仕方や出典の示し方,辞書や事典の使い方を理解し使うこと
は、新たに加えられました。
 小学校学習指導要領(2008年3月告示)の
「C (2) イ 記録や報告の文章」は、小学校学習指導要領(2017年3月告示)では、
「C (2) ア 記録や報告などの文章を読み,文章の一部を引用して」と改訂された。また、「C (2) ア」には、「分かったことや考えたことを説明したり,意見を述べたりする活動」が新たに加えられました。
「C (2) ウ 学校図書館などを利用し,事典や図鑑などから情報を得て,分かったことなどをまとめて説明する活動」は、新たに加えられました。
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 次に、2008年3月告示中学校学習指導要領と2017年3月告示中校学習指導要領ではどうでしょうか。

中学校学習指導要領(2008年3月告示)と中学校学習指導要領(2017年3月告示)の「用語」及び「語句」の変化等
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中学校学習指導要領(2008(平成20)年3月28日文部科学省告示第28号)
第1節 国語
第2 各学年の目標及び内容
〔第1学年〕
2 内 容
B 書くこと
(2) (1)に示す事項については,例えば,次のような言語活動を通して指導するものとする。
 イ 図表などを用いた説明や記録の文章を書くこと
C 読むこと
(2) (1)に示す事項については,例えば,次のような言語活動を通して指導するものとする。
 ア 様々な種類の文章を音読したり朗読したりすること。
 イ 文章と図表などとの関連を考えながら,説明や記録の文章を読むこと。
 ウ 課題に沿って本を読み,必要に応じて引用して紹介すること。
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【解説】
B(2)イは、中学校学習指導要領(2017年3月告示)では〔思考力,判断力,表現力等〕B(2)アとして改訂されています。
C(2)ア、イ(一部)、ウは、中学校学習指導要領(2017年3月告示)では削除されています。
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中学校学習指導要領(2017(平成29)年3月31日文部科学省告示第64号)
第1節 国語
第2 各学年の目標及び内容
〔第1学年〕
2 内 容
〔知識及び技能〕
 ⑵ 話や文章に含まれている情報の扱い方に関する次の事項を身に付けること
ができるよう指導する。
  ア 原因と結果,意見と根拠など情報と情報との関係について理解すること。
  イ 比較や分類,関係付けなどの情報の整理の仕方,引用の仕方や出典の示し方について理解を深め,それらを使うこと。(p.30)

〔思考力,判断力,表現力等〕
B 書くこと
⑵ ⑴に示す事項については,例えば,次のような言語活動を通して指導するものとする。
 ア 本や資料から文章や図表などを引用して説明したり記録したりするなど,事実やそれを基に考えたことを書く活動
C 読むこと
 ⑵ ⑴に示す事項については,例えば,次のような言語活動を通して指導するものとする。
  ア 説明や記録などの文章を読み,理解したことや考えたことを報告したり文章にまとめたりする活動
  イ 小説や随筆などを読み,考えたことなどを記録したり伝え合ったりする活動。
  ウ 学校図書館などを利用し,多様な情報を得て,考えたことなどを報告したり資料にまとめたりする活動。(p.32)
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【解説】
 2008年3月告示中学校学習指導要領〔第1学年〕2 内容 B 書くこと (2)「イ 図表などを用いた説明や記録の文章を書くこと。」が、2017年3月告示中学校学習指導要領〔第1学年〕2 内容〔思考力,判断力,表現力等〕B 書くこと ⑵「ア 本や資料から文章や図表などを引用して説明したり記録したりするなど,事実やそれを基に考えたことを書く活動。」と改訂されました。
〔知識及び技能〕 ⑵ 話や文章に含まれている情報の扱い方に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。  ア 原因と結果,意見と根拠など情報と情報との関係について理解すること。  イ 比較や分類,関係付けなどの情報の整理の仕方,引用の仕方や出典の示し方について理解を深め,それらを使うこと。
は、新たに加えられました。
〔思考力,判断力,表現力等〕
 C 読むこと
 ⑵ イ 小説や随筆などを読み,考えたことなどを記録したり伝え合ったりする活動。
   ウ 学校図書館などを利用し,多様な情報を得て,考えたことなどを報告したり資料にまとめたりする活動。
も、新たに加えられました。

 2017年3月告示の学習指導要領から、〔知識及び技能〕、〔思考力,判断力,表現力等〕、などの用語が加えられています。このことについては次項で述べます。

単元の評価基準
 学習指導案の重要な項目の一つである「単元の評価基準」(観点別学習状況評価の各観点)は、「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」ですが、学習指導要領においては、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」と示されています。
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2017年3月告示小学校学習指導要領
第1章 総則
第1 小学校教育の基本と教育課程の役割 3
 ⑴ 知識及び技能が習得されるようにすること。
 ⑵ 思考力、判断力、表現力等を育成すること。
 ⑶ 学びに向かう力、人間性等を涵養すること。(p.18)
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「⑴ 知識及び技能が習得されるようにすること。」が「知識及び技能」に、
「⑵ 思考力、判断力、表現力等を育成すること。」が「思考力、判断力、表現力等」に、
「⑶ 学びに向かう力、人間性等を涵養すること。」が「学びに向かう力、人間性等」となっています。

 前述のように、小学校学習指導要領(2017年3月告示)、中学校学習指導要領(2017年3月告示)ともに、「学校図書館を利用し、・・・」の記述が追加されました。

小学校学習指導要領(2017年3月告示)
〔思考力,判断力,表現力等〕C 読むこと
⑵ ウ 学校図書館などを利用し,事典や図鑑などから情報を得て,分かったことなどをまとめて説明する活動。(p.34)

示中学校学習指導要領(2017年3月告示)
〔思考力,判断力,表現力等〕
C 読むこと
⑵ ウ 学校図書館などを利用し,多様な情報を得て,考えたことなどを報告したり資料にまとめたりする活動。(p.32)

 このことについては、第5章で扱います。