第5章 学校図書館と主体的・対話的で深い学び

 第5章では、「主体的・対話的で深い学び」と学校図書館について、小学校学習指導要領(平成29年告示)の該当部分と、同時期に設置された学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議での「主体的・対話的で深い学び」と学校図書館ついての検討及びその報告書の内容を抽出してご紹介します。

小学校学習指導要領(平成29年告示)が示す「主体的・対話的で深い学び」と学校図書館
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第1章 総則
第3 教育課程の実施と学習評価
1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善
 各教科等の指導に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
⑴ 第1の3の⑴から⑶までに示すことが偏りなく実現されるよう,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら,児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこと。
 特に,各教科等において身に付けた知識及び技能を活用したり,思考力,判断力,表現力等や学びに向かう力,人間性等を発揮させたりして,学習の対象となる物事を捉え思考することにより,各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(以下「見方・考え方」という。)が鍛えられていくことに留意し,児童が各教科等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら,知識を互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう過程を重視した学習の充実を図ること。
⑵ 第2の2の⑴に示す言語能力の育成を図るため,各学校において必要な言語環境を整えるとともに,国語科を要としつつ各教科等の特質に応じて,児童の言語活動を充実すること。あわせて,⑺に示すとおり読書活動を充実すること。
⑶ 第2の2の⑴に示す情報活用能力の育成を図るため,各学校において,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え,これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること。また,各種の統計資料や新聞,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用
を図ること。
 あわせて,各教科等の特質に応じて,次の学習活動を計画的に実施すること。
ア 児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動
イ 児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動
⑷ 児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動を,計画的に取り入れるように工夫すること。
⑸ 児童が生命の有限性や自然の大切さ,主体的に挑戦してみることや多様な他者と協働することの重要性などを実感しながら理解することができるよう,各教科等の特質に応じた体験活動を重視し,家庭や地域社会と連携しつつ体系的・継続的に実施できるよう工夫すること。
⑹ 児童が自ら学習課題や学習活動を選択する機会を設けるなど,児童の興味・関心を生かした自主的,自発的な学習が促されるよう工夫すること。
⑺ 学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り,児童の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に生かすとともに,児童の自主的,自発的な学習活動や読書活動を充実すること。また,地域の図書館や博物館,美術館,劇場,音楽堂等の施設の活用を積極的に図り,資料を活用した情報
の収集や鑑賞等の学習活動を充実すること。(p.22-23)

第2章 各教科
第1節 国語
第2 各学年の目標及び内容
〔第1学年及び第2学年〕
〔思考力、判断力、表現力等〕
C 読むこと
⑵ ⑴に示す事項については,例えば,次のような言語活動を通して指導するものとする。
「ウ 学校図書館などを利用し,図鑑や科学的なことについて書いた本などを読み,分かったことなどを説明する活動。」(p.31、国語)

〔第3学年及び第4学年〕
〔思考力、判断力、表現力等〕
C 読むこと
⑵ ⑴に示す事項については,例えば,次のような言語活動を通して指導するものとする。
「ウ 学校図書館などを利用し,事典や図鑑などから情報を得て,分かったことなどをまとめて説明する活動。」(p.34、国語)

〔第5学年及び第6学年〕
〔思考力、判断力、表現力等〕
C 読むこと
「ウ 学校図書館などを利用し,複数の本や新聞などを活用して,調べたり考えたりしたことを報告する活動。」(p.38、国語)

第6章 特別活動
第2 各活動・学校行事の目標及び内容
〔学級活動〕
2 内 容
⑶ 一人一人のキャリア形成と自己実現
ウ 主体的な学習態度の形成と学校図書館等の活用
 学ぶことの意義や現在及び将来の学習と自己実現とのつながりを考えたり,自主的に学習する場としての学校図書館等を活用したりしながら,学習の見通しを立て,振り返ること。(p.184、特別活動)
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主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善のための学校図書館についての学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議報告
 小・中学校学習指導要領は2017(平成29)年3月31日に、高等学校学習指導要領は2018(平成30)年3月30日に告示されたものですが、学習指導要領改訂が公になったのは、2014(平成26)年11月20日に、文部科学大臣が中央教育審議会に諮問した「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」(26文科初第852号、中央教育審議会宛て文部科学大臣諮問、所管課は、初等中等教育局教育課程課)からです。
 これより数か月前、2014(平成26)年07月29日、「学校図書館法の一部を改正する法律の公布について(通知)」(26文科初第522号、文部科学省初等中等教育局長通知)がなされました。所管課は、初等中等教育局児童生徒課です。そして、2014(平成26)年12月04日中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会(第90回)が開催(議題は「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について)」)された翌年、2015(平成27)年06月30日文部科学省は、「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」を設置するに至ります(所管課は、初等中等教育局児童生徒課)。この協力者会議が2016(平成28)年10月20日に「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」を公開しました。この報告書の内容の一部を抜粋します。
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○ また、現在、中央教育審議会では、次期学習指導要領の改訂について議論が進められている。その中では、各学校において教育課程を編成するに当たっては、まず学習する子供の視点に立ち、教育課程全体や各教科等の学びを通じて「何ができるようになるか」という観点から、育成を目指す資質・能力1を整理し、その上で、整理された資質・能力を育成するために「何を学ぶのか」という、必要な指導内容等を検討し、その内容を「どのように学ぶか」という、子供たちの具体的な学びの姿を考えながら構成していく必要があるとされている。「どのように学ぶのか」という観点からは、「主体的・対話的で深い学び」、すなわち「アクティブ・ラーニング」の視点からの学びを実現させ、学びの質を高めていくことが重要であるとされている。
○ このため、これからの学校図書館には、読書活動における利活用に加え、児童生徒による課題の発見・解決のために必要な資料・情報の収集・選択など、各教科等の授業における言語活動や問題解決的な学習、探究的な学習、新聞を活用した学習(NIE:Newspaper in Education)などの様々な学習・指導場面での利活用を通じて、子供たちの言語能力、情報活用能力2、問題解決能力、批判的吟味力等の育成を支え、主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」の視点からの学び)を効果的に進める基盤としての役割が一層期待されている。
○ 具体的には、学校図書館の図書館資料を有効に利活用することにより、児童生徒が興味・関心等に応じて主体的に学習内容の背景を探ったり、学習の到達点を認識したりすることや、問いを見いだして解決したり、自己の考えを形成し表現したりすることが可能である。
○ また、児童生徒は、学校図書館の資料や情報を利活用して、探究的な学習を繰り返し経験することにより、情報を適切に収集・選択・活用する技能を身につけることを通して、推論する力や見通す力などを身に付け、これまで経験したことのない状況にも対応できるようになる。つまり、学校図書館の利活用は「学び方を学ぶ」ことでもある。
○ さらに、今後一層進展する情報化社会においては、情報を主体的に捉えながら、多面的・多角的に吟味し見定め、何が重要かを主体的に考え、見いだした情報を活用しながら他者と協働して新たな価値の創造に挑んでいくこと、情報技術を手段として活用していくこと、情報技術が急速に進化していく時代にふさわしい情報モラルを身に付けていくことなどが重要である。このような情報活用能力の育成に当たっても学校図書館の機能を有効に活用していくことが期待されている。
(学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」文部科学省,2016-10-20,p.3-5.)

○ 学校は、学習指導要領等を踏まえ、各教科等において、学校図書館の機能を計画的に利活用し、児童生徒の主体的・意欲的な学習活動や読書活動を充実するよう努める。その際、各教科等を横断的に捉え、学校図書館の利活用を基にした情報活用能力を学校全体として計画的かつ体系的に指導するよう努める。
○ 学校は、教育課程との関連を踏まえた学校図書館の利用指導・読書指導・情報活用に関する各種指導計画等に基づき、計画的・継続的に学校図書館の利活用が図られるよう努める。
○ 学校図書館は、教員の授業づくりや教材準備に関する支援や資料相談への対応など教員の教育活動への支援を行うよう努める。
(学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」文部科学省,2016-10-20,p.9.)
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 このことから、「主体的・対話的で深い学び」と学校図書館は密接不可分の関係にあるといえます。
学校図書館法改正と学習指導要領改訂作業時期の文部科学省初等中等教育局の動き
 学校図書館法改正と学習指導要領改訂作業時期の文部科学省初等中等教育局の動きを時系列で表にしてみると、次のようになります。
年月日 政策 所管課
2014(平成26)年07月29日 学校図書館法の一部を改正する法律の公布について(通知)」
(26文科初第522号、文部科学省初等中等教育局長通知)
初等中等教育局児童生徒課
2014(平成26)年11月20日 「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について(諮問)」
(26文科初第852号、中央教育審議会宛て文部科学大臣諮問)
初等中等教育局教育課程課
2014(平成26)年12月04日 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会(第90回)開催
(議題:「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」)
初等中等教育局教育課程課
2015(平成27)年06月30日 「学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議」を設置
初等中等教育局児童生徒課
2016(平成28)年10月20日 「これからの学校図書館の整備充実について(報告)」を公開 初等中等教育局児童生徒課
2016(平成28)年11月29日 「「学校司書のモデルカリキュラム」について(通知)」
(28文科初第1172号、文部科学省初等中等教育局長通知)
初等中等教育局児童生徒課
2017(平成29)年3月31日 小学校学習指導要領(文部科学省告示第63号) 初等中等教育局教育課程課
2017(平成29)年3月31日 中学校学習指導要領(文部科学省告示第64号) 初等中等教育局教育課程課
2018(平成30)年3月30日 高等学校学習指導要領(文部科学省告示第68号) 初等中等教育局教育課程課
2018(平成30)年08月23日 教育職員免許法施行規則の一部改正に伴う「学校司書のモデルカリキュラム」の改正について(通知)」
(30初児生第11号、文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)
初等中等教育局児童生徒課
司書教諭、学校司書及び図書館司書の資格


学校司書のモデルカリキュラム(全体)


学校図書館情報サービス論の内容