第6章 学習指導要領解説が示す「引用」の仕方と「出所の明示」(出典)の指導内容

 第6章では、「引用」の仕方と「出所の明示」(出典)について、小・中学校学習指導要領(平成29年告示)解説及び高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説の該当部分を抽出してご紹介します。

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編
第2章 国語科の目標及び内容
第2 節 国語科の内容
2 〔知識及び技能〕の内容
⑵ 情報の扱い方に関する事項
○情報の整理
第3学年及び第4学年
「イ 比較や分類の仕方,必要な語句などの書き留め方,引用の仕方や出典の示し方,辞書や事典の使
い方を理解し使うこと。」(p.24)

3 〔思考力,判断力,表現力等〕の内容
B 書くこと
○考えの形成,記述
「第1学年及び第2学年では,語と語や文と文との続き方に注意しながら,内容のまとまりが分かるように,第3学年及び第4学年では,自分の考えとそれを支える理由や事例との関係を明確にして,第5学年及び第6学年では,簡単に書いたり詳しく書いたり,事実と感想,意見とを区別して,引用したり,図表やグラフなどを用いたりして自分の考えが伝わるように書き表し方を工夫することを示している。」(p.33)

C 読むこと
「読むこと」の言語活動例
第3学年及び第4学年
「ア 記録や報告などの文章を読み,文章の一部を引用して,分かったことや考えたことを説明したり,意見を述べたりする活動。
イ 詩や物語などを読み,内容を説明したり,考えたことなどを伝え合ったりする活動。
ウ 学校図書館などを利用し,事典や図鑑などから情報を得て,分かったことなどをまとめて説明する活動。」(p.39)
小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編
第4章 指導計画の作成と内容の取扱い
第2節 内容の取扱いについての配慮事項
「情報の発信に当たっては,発信した情報に対する返信や反応が得られるように工夫することが望ましい。同級生や地域の人々,他の学校の児童たちから,自分の発信した情報に対する感想やアドバイスが返り,それを基にして改善したり発展させたりするサイクルをうまくつくることで,情報活用の実践力が育つと考えられる。またこのようなサイクルを進めることによって,目的に応じ,受け手の状況を踏まえた情報発信を行おうとする,情報発信者としての意識の高まりが期待できる。一方,情報を発信する学習においては,他者の作成した情報を参考にしたり引用したりすることがある。この場合,情報の作成者の権利を尊重し,引用した情報であることが分かるように転載し,出典を明記することが必要である。また,第3学年及び第4学年の国語科において学習する「引用の仕方や出典の示し方」を踏まえ,情報の中には所定の手順を踏んで初めて引用を許されるものがあることについても学ぶ必要がある。」(p.53)
中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編
第2章 国語科の目標及び内容
第2節 国語科の内容
2 〔知識及び技能〕の内容
(2)情報の扱い方に関する事項
〇情報の整理
〔第1学年〕
「イ 比較や分類,関係付けなどの情報の整理の仕方,引用の仕方や出典の示し方について理解を深め,
それらを使うこと。」(p.23)

(3)我が国の言語文化に関する事項
〇伝統的な言語文化
「各学年のイは,・・・第3 学年では,長く親しまれている言葉や古典の一節を引用するなどして使うことを示している。」(p.24)

3 〔思考力,判断力,表現力等〕の内容
B 書くこと
〇考えの形成,記述
「第1 学年では,根拠という概念があることを理解した上で,根拠を明確にしながら,第2 学年では,根拠が自分の考えを支える上で適切かどうかを考えながら説明や具体例を加えたり,表現の効果を考えて描写したりするなど,第3 学年では,表現の仕方を考えたり資料を適切に引用したりするなどして記述することを示している。」(p.33)
中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編
第4章 指導計画の作成と内容の取扱い
第2節 内容の取扱いについての配慮事項
「情報の発信に当たっては,発信した情報に対する返信や反応が得られるように工夫することが望ましい。同級生や地域の人々,他の学校の生徒たちから,自分の発信した情報に対する感想やアドバイスが返り,それを基にして改善したり発展させたりするサイクルをうまくつくることで,情報活用の実践力が育つと考えられる。またこのようなサイクルを進めることによって,目的に応じ,受け手の状況を踏まえた情報発信を行おうとする,情報発信者としての意識の高まりが期待できる。一方,情報を発信する学習においては,他者の作成した情報を参考にしたり引用したりすることがある。この場合,情報の作成者の権利を尊重し,引用した情報であることが分かるように転載し,出典を明記することが必要である。また,国語科において学習する「引用の仕方や出典の示し方」を踏まえ,情報の中には所定の手順を踏んで初めて引用を許されるものがあることについても学ぶ必要がある。」(p.53)
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編
第1章 総説
第4 節 国語科の内容
2 〔知識及び技能〕の内容
(2) 情報の扱い方に関する事項
〇情報の整理
「「現代の国語」では,推論の仕方を理解し使うこと,情報の妥当性や信頼性の吟味の仕方について理解を深め使うこと,引用の仕方や出典の示し方,それらの必要性について理解を深め使うこと,「論理国語」では,情報を重要度や抽象度などによって階層化して整理する方法について理解を深め使うこと,推論の仕方について理解を深め使うことを示している。(p.36-37)

3 〔思考力,判断力,表現力等〕の内容

第2章 国語科の各科目
第1節 現代の国語
3 内容
〔知識及び技能〕
(2) 情報の扱い方に関する事項
〇情報の整理
「エ 情報の妥当性や信頼性の吟味の仕方について理解を深め使うこと。
中学校第3学年のイを受けて,情報の妥当性や信頼性の吟味の仕方について理解を深めて使うことを示している。
情報化が進展し様々な情報が氾濫している現代社会においては,情報の妥当性や信頼性を十分吟味する必要がある。中学校までは,情報の信頼性の確かめ方に重点が置かれていた。「現代の国語」では,信頼性に加え,妥当性も視野に入れるとともに,「確かめる」だけでなく,吟味することが求められている。
情報の妥当性には,その情報が正しいものであるということに加えて,その情報を根拠として挙げる場合などに,根拠としての適切さを欠いていないことが必要となる。その情報がいくら正しいものであっても,何かを主張するための根拠としてふさわしいものとなっていなければ,その主張は説得力をもったものにはならない。中学校では,情報自体の信頼性を確かめることに重点が置かれていたが,「現代の国語」では,活用する場面にふさわしい情報かどうかを吟味することが求められている。
情報の信頼性は,その情報が確かなものであるかどうかを出典の示し方から確認するだけでなく,誰が,いつ,どこで発信したものかを確認することも重要となる。また,様々な情報を収集し吟味した上で,真偽や事実誤認の有無という観点から,確かなものかどうかを吟味することも求められる。「現代の国語」では,情報の吟味の仕方に様々な方法があり,集めた情報を相互に関係付けながら,その情報が信頼できるものか,妥当なものかを見極めて使っていくことが求められている。
指導に当たっては,例えば,〔思考力・判断力・表現力等〕の「B書くこと」(1)の「ア 目的や意図に応じて,実社会の中から適切な題材を決め,集めた情報の妥当性や信頼性を吟味して,伝えたいことを明確にすること。」や,「C読むこと」(1)の「イ 目的に応じて,文章や図表などに含まれている情報を相互に関係付けながら,内容や書き手の意図を解釈したり,文章の構成や論理の展開などについて評価したりするとともに,自分の考えを深めること。」との関連を図ることが考えられる。
 オ 引用の仕方や出典の示し方,それらの必要性について理解を深め使うこと。
中学校第1学年のイを受けて,引用の仕方や出典の仕方,それらの必要性について理解を深め使うことを示している。
論文などを書く場合には,自分の考えと他人の考えとを明確に区別して示すことが必要である。そのため,自分が参考にした書籍や論文の一節,および図表やグラフ,絵,写真などを引用する場合には,出典を明示することが重要となる。
引用とは,書籍や論文の一節や文,語句などをそのまま抜き出すことである。出典とは,引用元の書籍などの典拠のことである。具体的には,書名(タイトル),編著者名,出版年などを指す。ウェブサイトを閲覧した場合には,アドレスや閲覧日を示すことが求められる。これらは,著作権に留意するとともに,情報の受け手が引用部分について,引用元に遡って内容を確認できるようにするためのものである。
「現代の国語」では,引用の仕方,出典の示し方を理解するだけでなく,引用することによって自らの主張を補強し説得力を高めることができることなど,引用の必要性についても理解を深めることが求められる。また,引用の仕方や出典の示し方を誤ると,自らの主張の妥当性や信頼性を失う危険があることについて理解を深めておくことも必要となる。(p.80-81)

〔思考力,判断力,表現力等〕
B 書くこと
(1) 書くことに関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。
「ア 目的や意図に応じて,実社会の中から適切な題材を決め,集めた情報の妥当性や信頼性を吟味して,伝えたいことを明確にすること。
イ 読み手の理解が得られるよう,論理の展開,情報の分量や重要度などを考えて,文章の構成や展開を工夫すること。
ウ 自分の考えや事柄が的確に伝わるよう,根拠の示し方や説明の仕方を考えるとともに,文章の種類や,文体,語句などの表現の仕方を工夫すること。
エ 目的や意図に応じて書かれているかなどを確かめて,文章全体を整えたり,読み手からの助言などを踏まえて,自分の文章の特長や課題を捉え直したりすること。」(p.92)
「ア 目的や意図に応じて,実社会の中から適切な題材を決め,集めた情報の妥当性や信頼性を吟味して,伝えたいことを明確にすること。
中学校第3学年のアを受けて,目的や意図に応じて,適切な題材を決め,集めた情報の妥当性や信頼性を吟味して,伝えたいことを明確にすることを示している。決める題材については,中学校の「社会生活」を受けて,「現代の国語」では,実社会の中からとしている。
 目的や意図に応じてとは,何のために,誰に対して,どのような意図をもって書くのかなどを具体的に考え,題材や伝えたいことなどがそれらに合っているかを判断することである。
実社会の中から適切な題材を決める際には,目的や意図との関連に留意し,それが社会的に有益なものであるか,報告,提言,広報など,どのような形で還元するかなどについても考慮することが求められる。また,国語科の既習内容だけでなく,実体験や他教科等での学習経験と関連付けて,適切に選択する必要がある。例えば,「地域を流れる河川が,人々の暮らしに与えている影響の報告」,「地域の伝統や文化を継承し,持続発展可能な社会を作るための提言」,「安心安全に暮らせるまちづくりのためのシンポジウムの広報」など,年齢や性別などを超えて,一定の幅をもった人々の間で共有可能なものが考えられる。その上で,題材に対する個人的な体験や知識だけを情報とするのではなく,フィールドワークを実施したり,複数の媒体を活用したりするなどして,情報を幅広く収集することが必要である。
 集めた情報の妥当性とは,その情報が正しいものであるということに加えて,その情報を根拠として挙げる場合などに,根拠としての適切さを備えていることであり,その情報が置かれる場の中で相対的にかつ不断に判断されるものである。
 情報の信頼性とは,その情報の発信源などから,その情報が確かなものであると判断できることである。その際,出典の示し方から確認するだけでなく,誰が,いつ,どこで発信したものかを確認した上で判断する必要がある。
 また,吟味するとは,集めた情報の正誤や適否について詳しく検討することであり,書く内容を明確にすることである。中学校の「整理する」ことを受け,文章を書くに当たって,自分が集めた情報が適切であるかどうかを判断していくことを示している。
情報を吟味する際には,分類,比較,関係付けを行い,それぞれの共通点を見いだして組み合わせたり,幾つかをまとめて抽象化したりすることで,題材に対する個々の情報の重要度や位置付けなどを明確にすることができる。その際,検討の過程を明確にできるよう,ICT などの機器や紙を用いるとともに,ベン図,イメージマップ,XY チャート,マトリックス,ピラミッドチャート,座標軸,フィッシュボーン,熊手図など,情報の可視化に役立つ資材(いわゆる思考ツール)を活用することも効果的である。
 なお,特にインターネットの情報を材料とする際には,著作権や個人情報に配慮するなど,情報の取扱いに十分に注意する必要がある。」(p.92-93)

(2) (1)に示す事項については,例えば,次のような言語活動を通して指導するものとする。
「ア 論理的な文章や実用的な文章を読み,本文や資料を引用しながら,自分の意見や考えを論述する活動。
イ 読み手が必要とする情報に応じて手順書や紹介文などを書いたり,書式を踏まえて案内文や通知文などを書いたりする活動。
ウ 調べたことを整理して,報告書や説明資料などにまとめる活動。」(p.92)

「ア 論理的な文章や実用的な文章を読み,本文や資料を引用しながら,自分の意見や考え
を論述する活動。
 論理的な文章や実用的な文章の本文や資料を引用しながら,自分の意見や考えを論述する活動を示している。
 ここでの論理的な文章とは,現代の社会生活に必要とされる,説明文,論説文や解説文,評論文,意見文や批評文などのことである。一方,実用的な文章とは,一般的には,実社会において,具体的な何かの目的やねらいを達するために書かれた文章のことであり,新聞や広報誌など報道や広報の文章,案内,紹介,連絡,依頼などの文章や手紙のほか,会議や裁判などの記録,報告書,説明書,企画書,提案書などの実務的な文章,法令文,キャッチフレーズ,宣伝の文章などがある。また,インターネット上の様々な文章や電子メールの多くも,実務的な文章の一種と考えることができる。論理的な文章も実用的な文章も,小説,物語,詩,短歌,俳句などの文学的な文章を除いた文章である。
 書く目的や意図に応じてこれらの文章を読み,必要な情報を収集して,その本文や関連
する他の資料を適切に引用しながら,自分の意見や考えを論述する活動である。
 なお,本文や資料を引用するのは,自分の意見や考えを論述する目的に照らして必要であるためであり,「C読むこと」ではなく,あくまでも「B書くこと」の言語活動であることに留意する。引用には,その情報を根拠として示すことによって自分の意見や考えを補強して説得力を高めたり,論点を提示したりする役割などがある。引用した部分と自分の意見や考えとを明確に書き分けること,資料には必ず出典を明記することなど,論述する際の基本的なルールについて留意する必要がある。」(96-97)

高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 公民編
第2章 公民科の各科目
第1節 公共
1 科目の性格と目標
(2)目標
「(1 )現代の諸課題を捉え考察し,選択・判断するための手掛かりとなる概念や理論について理解するとともに,諸資料から,倫理的主体などとして活動するために必要となる情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。」p.30)
「諸資料から,倫理的主体などとして活動するために必要となる情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能については,大きく見れば次の三つの技能を用いる学習場面に分けて考えることができる。
 第一に,倫理的主体,法的主体,政治的主体,経済的主体などとして活動するために必要な社会的事象等に関する情報を収集する技能である。第二に,人間と社会の在り方についての見方・考え方を働かせて,収集した情報を適切かつ効果的に読み取る技能である。そして第三に,読み取った情報を効果的にまとめる技能である。これらの技能は,情報化が進展する中で社会的事象等について考察するときに求められる力,すなわち,関連のある資料を様々な情報手段を適切かつ効果的に活用して収集し,かつ考察に必要な情報を合理的な基準で適切に選択し分析するとともに効果的にまとめる力を意味している。現代では,コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用し,大量の情報を手に入れることが可能となっており,必要な情報とそうでない情報を選別する合理的な基準を見いだす能力を学習の中で養う工夫が重要である。その際,「関連する各種の統計,年鑑,白書,新聞,読み物,地図その他の資料の出典などを確認し,その信頼性を踏まえつつ適切に活用」(各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い)できるようにすることが大切であり,情報の出典や発信者の立場や意図なども踏まえ,
その信頼性や客観性,真偽などについて適切に吟味するよう指導を工夫することが求められる。」(p.31)

第3章 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い
2 内容の取扱いに当たっての配慮事項
2 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
「(2)諸資料から,社会的事象等に関する様々な情報を効果的に収集し,読み取り,まとめる技能を身に付ける学習活動を重視するとともに,具体的な体験を伴う学習の充実を図るようにすること。その際,現代の諸課題を捉え,多面的・多角的に考察,構想するに当たっては,関連する各種の統計,年鑑,白書,新聞,読み物,地図その他の資料の出典などを確認し,その信頼性を踏まえつつ適切に活用したり,考察,構想の過程と結果を整理し報告書にまとめ,発表したりするなどの活動を取り入れるようにすること。」(p.164)
「また,有益適切な教材である諸資料に基づいて多面的・多角的に考察したり,事実を客観的に捉え,公正に判断したりすることを妨げることのないよう留意することについて,その拠り所となる資料に関しては,その資料の出典や用途,作成の経緯等を含めて吟味した上で使用することが必要である。」(p.166)
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 総合的な探究の時間編
第5章 指導計画の作成と内容の取扱い
第2節 内容の取扱いについての配慮事項
「情報の発信に当たっては,発信した情報に対する返信や反応が得られるように工夫することが望ましい。同級生や地域の人々,他の学校の生徒たち,行政や地域社会,国内外の人々から,自分の発信した情報に対する感想やアドバイスが返り,それを基にして改善したり発展させたりするサイクルをうまくつくることで,情報活用の実践力が育つと考えられる。またこのようなサイクルを進めることによって,目的に応じ,受け手の状況を踏まえた情報発信を行おうとする,情報発信者としての意識の高まりが期待できる。一方,情報を発信する学習においては,他者の作成した情報を参考にしたり引用したりすることがある。この場合,情報の作成者の権利を尊重し,引用した情報であることが分かるように転載し,出典を明記することが必要である。また,情報科において学習する「情報モラル」を踏まえ,情報の中には所定の手順を踏んで初めて引用を許されるものがあることについても十分に理解することが必要である。」(p.54)