第7章 「引用」及び「出所の明示」(出典)の意義

 第7章では、「引用」の仕方と「出所の明示」(出典)の意義について、小・中学校学習指導要領(平成29年告示)解説及び高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説の該当部分を抽出してご紹介します。「引用」の仕方と「出所の明示」は、読み手には引用元にあたれるというメリットがあると同時に、執筆者にとっては著作物の信頼性を高めるというメリットがあります。

学習指導要領及び同解説
(1)高等学校学習指導要領(平成30年告示)
第2章 各学科に共通する各教科
第2節 地理歴史
第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い
2 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
「(2) 調査や諸資料から,社会的事象に関する様々な情報を効果的に収集し,読み取り,まとめる技能を身に付ける学習活動を重視するとともに,作業的で具体的な体験を伴う学習の充実を図るようにすること。その際,地図や年表を読んだり作成したり,現代社会の諸課題を捉え,多面的・多角的に考察,構想するに当たっては,関連する各種の統計,年鑑,白書,画像,新聞,読み物,その他の資料の出典などを確認し,その信頼性を踏まえつつ適切に活用したり,観察や調査などの過程と結果を整理し報告書にまとめ,発表したりするなどの活動を取り入れるようにすること。」(p.77-78)

第3節 公民
第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い
2 内容の取扱いに当たっては,次の事項に配慮するものとする。
「(2) 諸資料から,社会的事象等に関する様々な情報を効果的に収集し,読み取り,まとめる技能を身に付ける学習活動を重視するとともに,具体的な体験を伴う学習の充実を図るようにすること。その際,現代の諸課題を捉え,多面的・多角的に考察,構想するに当たっては,関連する各種の統計,年鑑,白書,新聞,読み物,地図その他の資料の出典などを確認し,その信頼性を踏まえつつ適切に活用したり,考察,構想の過程と結果を整理し報告書にまとめ,発表したりするなどの活動を取り入れるようにすること。」(p.90)

(2)高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編
第2章 国語科の各科目
第1節 現代の国語
3 内容
〔知識及び技能〕
(2) 情報の扱い方に関する事項
〇情報の整理
「オ 引用の仕方や出典の示し方,それらの必要性について理解を深め使うこと。
中学校第1学年のイを受けて,引用の仕方や出典の仕方,それらの必要性について理解を深め使うことを示している。
論文などを書く場合には,自分の考えと他人の考えとを明確に区別して示すことが必要である。そのため,自分が参考にした書籍や論文の一節,および図表やグラフ,絵,写真などを引用する場合には,出典を明示することが重要となる。
引用とは,書籍や論文の一節や文,語句などをそのまま抜き出すことである。出典とは,引用元の書籍などの典拠のことである。具体的には,書名(タイトル),編著者名,出版年などを指す。ウェブサイトを閲覧した場合には,アドレスや閲覧日を示すことが求められる。これらは,著作権に留意するとともに,情報の受け手が引用部分について,引用元に遡って内容を確認できるようにするためのものである。
「現代の国語」では,引用の仕方,出典の示し方を理解するだけでなく,引用することによって自らの主張を補強し説得力を高めることができることなど,引用の必要性についても理解を深めることが求められる。また,引用の仕方や出典の示し方を誤ると,自らの主張の妥当性や信頼性を失う危険があることについて理解を深めておくことも必要となる。」(p.81)

〔思考力、判断力、表現力等〕
B 書くこと
「ア 論理的な文章や実用的な文章を読み,本文や資料を引用しながら,自分の意見や考えを論述する活動。
論理的な文章や実用的な文章の本文や資料を引用しながら,自分の意見や考えを論述する活動を示している。
ここでの論理的な文章とは,現代の社会生活に必要とされる,説明文,論説文や解説文,評論文,意見文や批評文などのことである。一方,実用的な文章とは,一般的には,実社会において,具体的な何かの目的やねらいを達するために書かれた文章のことであり,新聞や広報誌など報道や広報の文章,案内,紹介,連絡,依頼などの文章や手紙のほか,会議や裁判などの記録,報告書,説明書,企画書,提案書などの実務的な文章,法令文,キャッチフレーズ,宣伝の文章などがある。また,インターネット上の様々な文章や電子メールの多くも,実務的な文章の一種と考えることができる。論理的な文章も実用的な文章も,小説,物語,詩,短歌,俳句などの文学的な文章を除いた文章である。
書く目的や意図に応じてこれらの文章を読み,必要な情報を収集して,その本文や関連する他の資料を適切に引用しながら,自分の意見や考えを論述する活動である。
なお,本文や資料を引用するのは,自分の意見や考えを論述する目的に照らして必要であるためであり,「C読むこと」ではなく,あくまでも「B書くこと」の言語活動であることに留意する。引用には,その情報を根拠として示すことによって自分の意見や考えを補強して説得力を高めたり,論点を提示したりする役割などがある。引用した部分と自分の意見や考えとを明確に書き分けること,資料には必ず出典を明記することなど,論述する際の基本的なルールについて留意する必要がある。」(p.96-97)
「引用」及び「出所の明示」(出典)の意義のまとめ
〇「書物や典拠などのタイトル,著作者,発行年など,読み手が引用元に立ち返ってその内容を確認できるよう出典を示すとともに,引用部分が適切な量になるようにする必要がある。このことは,著作権を尊重し,保護するために必要なこと」(小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編 第3章 各学年の内容 第2節 第3学年及び第4学年の内容 1 〔知識及び技能〕(2) 情報の扱い方に関する事項 〇情報の整理(p.86-87))

〇「出典については,その媒体に応じて,書名,著者名,発行年や掲載日,出版社,ウェブサイトの名称やアドレスなどを示すことにより,著作権に留意するとともに,情報の受け手が出典を知ることができるよう配慮すること」(中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編 第3章 各学年の内容 第1節 第1学年の内容 1 〔知識及び技能〕 (2) 情報の扱い方に関する事項 〇情報の整理 (p.47-48))
〇「他者の作成した情報を参考にしたり引用したりすることがある。この場合,情報の作成者の権利を尊重し,引用した情報であることが分かるように転載し,出典を明記することが必要」「情報の中には所定の手順を踏んで初めて引用を許されるものがあること」(中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編 第4章 指導計画の作成と内容の取扱い 
第2節 内容の取扱いについての配慮事項(p.53))

〇「引用とは,書籍や論文の一節や文,語句などをそのまま抜き出すことである。出典とは,引用元の書籍などの典拠のことである。具体的には,書名(タイトル),編著者名,出版年などを指す。ウェブサイトを閲覧した場合には,アドレスや閲覧日を示すことが求められる。これらは,著作権に留意するとともに,情報の受け手が引用部分について,引用元に遡って内容を確認できるようにするためのものである。」「引用することによって自らの主張を補強し説得力を高めることができることなど,引用の必要性についても理解を深めること」「引用の仕方や出典の示し方を誤ると,自らの主張の妥当性や信頼性を失う危険があること」(p.81))「引用には,その情報を根拠として示すことによって自分の意見や考えを補強して説得力を高めたり,論点を提示したりする役割などがある。引用した部分と自分の意見や考えとを明確に書き分けること,資料には必ず出典を明記することなど,論述する際の基本的なルールについて留意する必要がある。」(高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 国語編 第2章 国語科の各科目 第1節 現代の国語 3 内容 〔知識及び技能〕(2) 情報の扱い方に関する事項 〇情報の整理(p.96-97))
独立行政法人日本学術振興会が示す「出所の明示」の捉え方
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 「他人の研究成果を利用するためには、出典先を明示し、読者がその出典先をあたれるようにしなければなりません。出典を示すことなく、他人の研究成果を利用することは盗用にあたります。」
 「出典を示すにあたっては、どの部分が著者によるもので、どの部分が他の科学者によるものか、明確に示さなければなりません。」
 「単に出典先を記載するだけでは不十分な場合もあります。例えば、Aが他の著者Bの文章をそのまま使って、その出典だけを注記するにとどめたとすると、その内容についてのBのクレジットは確保されますが、その文章そのものの作者がAなのかBなのかは分かりません。他の科学者の文章の一部をそのまま使う場合には、引用符を使ったり、段落を下げたりしてから、出典を明示し、文章自体もBのものであることを分かるようにしなければなりません。」
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(日本学術振興会『科学の健全な発展のために』日本学術振興会,丸善出版,2015,p.50.)