第8章 「引用」及び「出所の明示」(出典)の実際

 第8章では、「引用」の仕方と「出所の明示」(出典)について、学会の学術論文投稿規程ではどのようになっているか、引用、出典の部分を抽出してご紹介します。また、実際の論文の記述例もご紹介します。

日本心理学会執筆・投稿の手びき(※)(2022年版)(抜粋)
(※)この手びきは、日本心理学会、日本社会心理学会共通。
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3.7 引用・言及
3.7.1 文献の引用
(1)著者名・刊行年
本文中に文献を引用する場合,著者名(姓)の直後に刊行年を添える。
i) 本文中に文章として入れる場合
「原田(2020)によれば…」,「Harada(2020)は…」
ii) 括弧内に文献を示す場合
「…という(中村,2020)。」,「…である(Nakamura, 2020)。」
iii) 同一著者で,同一年に刊行された文献がいくつかある場合,刊行年のあとにアルファ
ベット小文字a,b…を付して区別する。
「たとえば浅野(2020a, 2020b)では…」,「…とする(Asano, 2020a, 2020b)。」,「井
上他(2020a, 2020b)が…」,「(Kojima et al., 2020a, 2020b)。」
iv) 異なる著者で,同一姓,同一年の文献の引用があり,混同の恐れのある場合,日本語
文献であれば第1 著者の名を,外国語文献であればイニシャルを添える。
「山田 剛史(2020)では…であり,山田 祐樹(2020)では…となっている。」
「…といえる(山田 剛史,2020; 山田 祐樹,2020)。」
「本研究は,T. Yamada(2020)とY. Yamada(2020)により…」
「…考えられる(H. Hayashi, 2020; Y. Hayashi, 2020)。」
(2)自著の引用
著者自身の既刊文献の引用は,「著者は…」などとせず,「上瀬(2020)は…」のよう
にする。
(3)共著(著者2 名)
著者が2 名の共著の場合は,引用のたびごとに両著者名を書く。
i) 日本語文献では,著者名の間は中黒(・)で結ぶ。
「池田・深谷(2020)は…」,「…している(池田・深谷,2020)。」
ii) 英語文献では,"&"を用いる。
「Itakura & Ito(2020)によれば…」
「…確認された(Itakura & Ito, 2020)。」

(4)共著(著者が3 名以上)
i) 著者が3 名以上の共著の場合,初出の際から,第1 著者名以外は「他」,"et al."と略
記する。
日本語文献「井上他(2020)が…」,「…になる(井上他,2020)。」
英語文献  「Kojima et al.(2020)を用いて…」
      「…だろう(Kojima et al., 2020)。」
ii) 複数著者の論文を「他」,"et al." 表記にした結果,同じ省略表記のものが複数できて
しまう場合は,論文間の区別がつくまで著者名を書く。
日本語文献「井上・大江・川上他(2020)では…」
      「…とする(井上・大江・齋藤他,2000)。」
英語文献  「Kojima, Komura, Sawamiya et al.(2020)では…」
      「とされる(Kojima, Komura, Sugiura et al., 2020)」
iii) 省略表記をした結果,最後の著者だけが異なる場合は,「他」,"et al."とせず,最後
の著者まで書く。
日本語文献「井上・大江・川上・岸本・国里(2020)によると…」
      「…とする(井上・大江・川上・岸本・小島,2020)。」
英語文献  「Kojima, Komura, Sawamiya, Sugiura, & Suzuki(2020)では…」
      「となっている(Kojima, Komura, Sawamiya, Sugiura, & Souma, 2020」
(5)翻訳書の引用
翻訳書を引用する場合は,原著者名とその刊行年を最初に引用し,そのあとに翻訳書
の翻訳者名とその刊行年を括弧に入れる。
i) 本文中に文章として入れる場合「Takeda(2019 田中・東山訳 2020)では…」とし,
「Takeda(2019)」あるいは「Takeda(2020)」とはしない。
ii) 括弧内に文献を示す場合「…試みた(Takeda, 2019 田中・東山訳 2020)。」
(6)文献引用の順序
本文中の同一箇所で複数の文献を引用するときには,文末の同じ括弧内に著者名のア
ルファベット順にセミコロン(;)で区切り,また同一著者については単著を優先し,
刊行年順に並べてそれらをカンマ(,)で区切り示す。
「…となる(中道他,2020; 外山,2019; Toyama & Nagai, 2017)。」

3.7.2 文章の引用
(1)文献の記述の一部を直接引用するときには,原文(翻訳文)のとおり正確に転記する。
(2)引用文は別行とせずに本文に続け,引用符(「 」," ")で囲む。
(3)引用文中にさらに引用句があるときには,内側に『 』,' 'を用いる。
(4)引用文には,末尾に著者名,刊行年,掲載ページを書き添える。
「…示された(西山,2018, pp. 150152)
。」
(5) 原典が入手困難なために翻訳書による場合は,翻訳書の引用のしかたに従い,掲載ペー
ジを明記する。
(6)文章を引用する際には,著作権者の許可が必要な場合があるので注意する。
(7)原文の一部を省略した場合には,「…」で示す。
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(『日本心理学会執筆・投稿の手びき(2022年版) 』p.30-32.)
大学図書館研究編集委員会投稿規程(テンプレート抜粋)
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(6) 注・引用文献は通し番号とし,本文中の該当箇所の右肩に1)のように上付き文字で付してください。該当箇所に句読点が来る場合は,句読点の直前の文字に付してください。なお,注・引用文献を付す場合に,Wordの脚注機能,引用文献機能は用いないでください。

注・引用文献
1) 著者名.論文名.誌名.出版年,巻数,号数,はじめのページ-おわりのページ.(←雑誌の1記事の場合)
2) 特集標題.誌名.出版年,巻数,号数,はじめのページ-おわりのページ.(←雑誌特集号の記事全部の場合)
3) 著者名.書名.版表示 ,出版地,出版者,出版年,総ページ数,(シリーズ名,シリーズ番号). (ISBN) (←図書1冊(全体)の場合)
4) 著者名.“章の見出し”.書名.編者名.版表示,出版地,出版者,出版年,はじめのページ-おわりのページ,(シリーズ名,シリーズ番号). (ISBN) (←図書の1章または一部の場合)
5) 著者名.論文名.誌名.出版年,巻数,号数,ページ.(媒体表示),入手先,(入手日付).(←電子雑誌の1記事の場合)
6) 著者名.書名.版表示.出版者,出版年.(媒体表示),入手先,(入手日付).(←電子図書1冊の場合)
7) 著者名.“ウェブページの題名”.ウェブサイトの名称. 更新日付.(媒体表示),入手先,(入手日付).(←ウェブサイトの場合)
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(国公私立大学図書館協力委員会大学図書館研究編集委員会「大学図書館研究」投稿規程(テンプレート抜粋)

引用部分をかぎ(「 」)でくくった実際の論文例
しかし,文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会情報科学技術委員会のもとに設置されたワーキング・グループが, 「十分に活用されていないデータベースがあるという指摘がある」ことや, 「研究者等が有する学術情報を,メタデータ等の二次情報を付与して体系的に発信することは重要である」こと19)を,あえて指摘しなければならなかったことを考え合わせると,
引用文献
19) 文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会情報科学技術委員会デジタル研究情報基盤ワーキング・グループ.学術情報の流通基盤の充実について(審議のまとめ)平成14年3月12日.(online), available from<http://www.mext.go.jp/b_menu /shingi/gijyutu/gijyutu2/toushin/020401.htm>, (accessed 2007-09-04).

(高橋輝「ベッテルハイム史料の修復と機関リポジトリでの公開の方法」大学図書館研究(81):59-68, 2007-12.引用はp.64-65)

【解説】
 本文中「19)」は、上付き文字です。
 引用文献リストでの記述は、
著作者名:文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会情報科学技術委員会デジタル研究情報基盤ワーキング・グループ
書名:学術情報の流通基盤の充実について(審議のまとめ)
発表年月日:平成14年3月12日
インターネット閲覧である旨の表示:(online)
URL:available from<http://www.mext.go.jp/b_menu /shingi/gijyutu/gijyutu2/toushin/020401.htm>
アクセス年月日:(accessed 2007-09-04)
となります。
 引用した文章は、「p.64-65」の2ページにまたがっていることが分かります。

 さてここで、引用方法の種類について述べます。
 引用方法には、大きく分けて直接引用と間接引用の2つがあります。

 直接引用は、引用する部分を一文字も変更することなく、かぎ括弧(「  」)でくくるものです。これは、小学校学習指導要領でも示されているとおりです。短い文章はこれで足りますが、引用の部分が少し長い文章の場合は、引用の前後をそれぞれ1行ずつ空けて、引用部分の全体を1~2文字下げることで、引用であることを示します。「日本心理学会執筆・投稿の手びき」の「3.7.2 文章の引用」も参照してください。

 間接引用は、直接引用による文章よりも長いものの場合に使用され、要約して引用するものです。要約しますので、どこからどこまでが引用元の文献の要約であるか、分かるようにしなければなりません。「日本心理学会執筆・投稿の手びき」の「3.7.1 文献の引用」が、これに当たります。

間接引用の場合の実際の論文例
1958年には,レニングラード(現在のサンクトベテルブルグ)のサルテイコフ・シチェドリン図書館(State Public Saltykov-Shchedrin Library,現在のロシア国民図書館Russian National Library) が,水流によってパルプを本紙の穴になった部分に充填する方法を開発10)するなど,幾多の取り組みの中で実用化されている。
引用文献
10)増田克彦. 漉嵌機の和紙修理への応用.保存科学.(東京国立文化財研究所).vol.l5,1976,p .l02-105.

(高橋輝「ベッテルハイム史料の修復と機関リポジトリでの公開の方法」大学図書館研究(81):59-68, 2007-12.引用はp.62.)

【解説】
 本文中「10)」は、上付き文字です。」
 引用文献リストでの記述は、
著作者名:増田克彦
論文名:漉嵌機の和紙修理への応用
学術雑誌名:保存科学
発行者:東京国立文化財研究所
巻号数:vol.15
出版年:1976
論文の所収ページ:p.102-105
となります。